50代でセミリタイアしたキャリコンのはなし

50代でセミリタイアし自由な働き方を選びました

キャリコン日誌3 「3人のストレイシープ」

今回はキャリアコンサルティングで出会った3人の若者のお話。

 

1人めは30代半ばの男性で、幾つかのアルバイトと短期間の会社員を経て、Webデザインの職業訓練へ入ってきました。キャリアコンサルティングでは、「アート系の仕事、展覧会などのイベントを打つ会社に入りたい」とのこと。では、これまでそれに関連する仕事をしていたかというと、イベント関連では会場の案内係のみ。アートには興味はあるが、携わった事もありません。以前にアートイベントを企画する会社の営業職に応募しましたが、不採用になった経験がありました。

「何故、不採用となったか、原因分析できていますか?」と尋ねると、

「経験がないから?」と答えます。

「何の経験?」と私。

「芸術の。」と彼は答えます。

確かに、アートに携わる仕事をしようと思ったら、芸術の知識は必要ですが、それ以前に、彼は営業のノウハウがない事に原因があるとは気付いていませんでした。

「モノやサービスを売りたいと思うとき、どんな話の進め方をすればいいか、イメージできますか?」と尋ねる私に、彼は「うーん」と唸るのでした。

 

2人めは20代後半男性。夜系の飲食業で裏方として事務をしてたのですが、年齢的なこともあり、昼間の正社員で働きたい気持ちになったそうです。この方もWebデザインの訓練生なのでが、大手のゲーム会社の求人を持って私のところにやって来ました。事務職なのですが、Webサイトの運営もできるらしく、それを糸口にサイト制作の企画に携わる事を目標にしたいとのこと。応募書類の添削を依頼されました。内容を確認しながら、文章構成や伝えたい事を明確にする、などの一通りの指導を行いました。

「『Web制作などではなく、なぜ事務職に応募するのですか?』ってきかれたら、何て答えたらいいでしょう?」

ふいに、彼が質問をしてきました。就活をしたことがない彼にとっては、不安に感じたことでしょう。しかし、「何て答えればいいでしょう?」という彼の尋ね方が、私はとても気になりました。その仕事に彼が惹かれた理由は、彼が一番知ってるはずです。なのに、その理由を私に尋ねることに違和感を感じたのでした。

「何故、その仕事を選んだの?」

尋ねる私に、10数秒黙考したあと、彼は自分なりの理由を述べました。考えれば、自分が答えを持っている事、それをまずは自分が考えなければならない、という事を分かってもらえたのかな、と感じました。

 

3人めは、20代中盤の女性。複雑な事情を抱える彼女は、そこから抜け出すため、真面目に前向きに訓練を頑張っているのでした。頑張りすぎて、電池切れにならないかと心配してしまうほどです。

授業終わりに、話を聴いてほしいと言われたので、聴いてみました。

彼女には、知人の紹介でエージェントがついているそうです。私と同年代らしい、そのベテランエージェントから、MR(医療情報担当者)を勧められたそうです。自分が口利きすれば、きっと採用されるからと、半ば強引に推してくる。

彼女には文系の教師歴があったり、飲食店での勤務歴があったりしますが、医薬品に関して経験はもちろん、基礎知識もありません。ついでに言えば、興味もありません。優しい性格からか、当惑しながらもはっきり断れず、セカンドオピニオンを求めに私のところに来たのでした。

「エージェントにその職を勧める理由を確認して、それに納得できるのなら、自分なりに興味がもてそうかどうか、検討してもいいと思う。しかし、納得できないのであれば、そのエージェントにはっきり縁を切りたいと伝えた方が良い。」

そのように彼女に伝えました。

このような、ひとをモノのように売りさばこうとするエージェントを時々見かけます。前職では、とにかくひとを売りさばこうとする派遣会社の応対を幾度となく経験したのですが、他人事とはいえ、当人に寄り添わないその倫理観は、紹介される方から見ても軽蔑の対象でしかありません。

 

三者三様ですが、自分を把握し切れないひと、把握しても整理が苦手なひと、真面目にやってるのに周りに恵まれないひと、自分に向き合って前に進んでいくというのは、本当にしんどいことだと、改めて感じたのでした。

岡目八目。私は自分自身をきちんと評価できているのでしょうか。